換気システムいろいろ
健康住宅という言葉を使うメーカーも多くなり、各社独自の換気システムをアピールすることも増えてきました。でも、一般の方にとって、換気ってわかりにくいですよね。大手のハウスメーカーだからとか、有名なメーカーの商品だからといって、安心していませんか?
健康で快適な暮らしにとって、とても大切な換気システムについて、もう少ししっかり勉強してみましょう。
まず、基礎知識を整理します。外の空気を取り入れることを「給気」、室内の空気を排出することを「排気」といいます。
昔からよくある、プロペラ型の換気扇は、ファンを回すことで、室内の空気を外へ向かって送り出します。これは機械による排気をしています。一方ファンで空気を出した分はどこかから入ってきていますが、機械を使っていないので、自然給気といいます。このように排気に機械を使い、給気は自然に行うシステムを第3種換気といいます。
給気にも機械を使う方法を、第1種換気といいます。もう一つ第2種換気というのもありますが、住宅では使いませんので割愛します。
それでは、具体的にいろんな換気システムを勉強していきましょう。
(1)ダクトレスの換気システム
換気“システム”と呼べるほどのものなのかわかりませんが、もっともシンプルなやり方です。給気は、壁に設けた自然給気口から、排気はキッチン・トイレやお風呂などの換気扇を利用します。
最近のシステムキッチンやユニットバスについている換気扇は、24時間モードが設定されていて、回転数を抑えて常時運転することができるようになっています。
☆利点☆
イニシャルコスト、ランニングコストともに安い。
気密性が高く容積が小さいマンションなどには向いている。
★欠点★
家全体で〇〇㎥といったざっくりとした計画しかできないので、各部屋まんべんなく換気することは難しく、法律の要求をクリアするためだけにつけているという感じ。
音もうるさいので、実際は停めてしまっているお宅も多いのでは・・・
◎コメント◎
そもそも気密性の低い家だから換気扇なんて要らない。確認申請が通ればそれでよいという方は、このシステムでも良いかもしれません。
(2)ダクト式の第3種換気
排気用の換気扇からダクト(配管)をして各室に排気口を設けるシステムです。排気口の数を増やすことで、まんべんなく換気することが可能です。換気扇は50坪くらいまで1台で賄うことができるので、コストもそれほど上がらず、メンテナンスの負担も少なくて済みます。
☆利点☆
コストがやや安い。
排気にだけダクトを用いるので、ダクト内の汚れを気にしなくてもよい。
★欠点★
気密性が低い住宅では機能しない。
ダクトの長さ・排気口の開度など、専門的な計算が必要。
◎コメント◎
住宅には最適なシステムだと思います。それだけに、バリエーションも豊富で、ダクトの方式、風量計算の方法などにより、性能に大きな差があるので注意が必要です。
詳しく勉強したい方は、別の回をお待ちください。
(3)ダクトレスの第1種換気
前述の(1)のシステムに、給気ファンをつけたものです。排気ファンだけでは風量が不足する場合に、小さな換気扇を給気用につけることがあります。これは分類で行くと第1種換気ということになります。
☆利点☆
イニシャルコストがやや安い
★欠点★
給気ファンが何台も付くので、メンテナンスコストはむしろ高くなる。
◎コメント◎
(1)と同じです
(4)ダクト式の第1種換気
給気にも排気にもダクト(配管)を用いる方法です。換気扇が給気用と排気用2台必要で、ダクト配管も往復必要になるので、少し大掛かりになります。
また熱交換フィルターを通すことで、換気による熱損失を少なくすることができます。
☆利点☆
気密性の低い建物でも、各部屋に給気・排気を設けることで、必要な量の換気を行うことができる。
熱交換をすることで冷暖房の効率をあげられる。
★欠点★
複雑な風量計算が必要。(複雑になるということは計算と実態が合わない可能性も高まる)
給気にもダクトを用いるが、ダクト内の掃除が不可能。
ダクト長が伸び、熱交換も含め高性能なフィルターを介すると、換気扇はより強い力で引っ張らなくてはならなくなり、消費電力も増えるので、必ずしも省エネとも言えなくなる。
◎コメント◎
ハウスメーカーや大手電機メーカーでは上位機種として推奨されていますが、お金をかけるほどのメリットはないと思います。
(5)熱交換について
熱交換という何やら難しそうな言葉を使いましたが、これについても少し勉強してみましょう。
暖房しているとき、換気扇を回すと、せっかく温まった空気を捨てて、冷たい空気を入れてしまうともったいないですよね。そこで、出ていく空気の熱で入ってくる空気を暖めてやろうというのが、熱交換なのです。というと大変なシステムのようですが、中身はいたってシンプルです。
フィルターのイメージを図にしてみました。
段ボールの断面を思い浮かべてください。図のブルーの部分に給気がオレンジの部分に排気が通ります。ブルーとオレンジの間は特殊な膜で仕切られていて、空気は通さないけれど熱は伝わります。このようにして、給気と排気がすれ違う時に熱が移動することで熱交換できます。
ところが、厚みが10cm程度のフィルターで空気がすれ違ったところで、交換できる熱はたかが知れていました。そこで、接触する面積を増やすために、フィルターを複雑な構造にするとともに、仕切りの膜を改良していきます。
熱には顕熱(けんねつ)と潜熱(せんねつ)があります。顕熱は私たちが普段使う熱と同義と考えてください。潜熱というのは水蒸気を熱に換算してとらえたものです。たとえば、冬は暖房とともに加湿をしますが、水が水蒸気になる時気化熱が奪われ、空気は冷やされます。
換気と一緒に水蒸気を捨ててしまうと、また加湿してやらないといけませんから、また空気を冷やすことになります。水蒸気を捨てずに戻すことができれば、加湿をしなくてよいので、空気を冷やさなくて済みます。つまり、水蒸気=熱と考えることができるのです。
現在の熱交換システムは、全熱交換型といって、顕熱と潜熱を両方交換します。顕熱はうすい膜を介してすれ違うことで伝わるイメージです。潜熱つまり水蒸気は、仕切りの膜を改良して通りぬけられるようにしました。水蒸気はより濃度低い方へ移動することになり、冬は排気から給気へ、夏は給気から排気へ移動します。これは熱交換というだけでなく、冬の乾燥、夏のジメジメを防ぐうえでも理にかなった方法と言えます。
もう一つ、接触面積を増やすためにフィルターを長くしています。今では熱交換効率98%などという換気扇も登場していますが、驚くほど大きなフィルターがついています。中には冷蔵庫ほどの大きさのフィルターもあります。
ところで、ここでよーく考えてみましょう。マジックのような熱交換に感心して、肝心のことを忘れてしまっていませんか?そもそも何をしていたのかというと、換気です。換気は汚れた空気を捨てて、きれいな空気を入れることです。
先程の特殊な膜は水蒸気だけは通すけど、ほかの物質は通さないのでしょうか。膜は目詰まりとかしないんでしょうか。熱交換フィルターは大きくなってしまって掃除はできないので交換しますが、その間だんだん汚れていくわけですから、室内の空気もだんだん汚くなっていくのです。
省エネについてもどうでしょうか。これほどの大きなフィルターを通すということは、とてつもなく長いストローで飲み物を飲むようなもので、ものすごい力が必要です。
(2)の第3種換気と消費電力を比べたら、換気扇が2台で倍、その抵抗が数倍ですから、消費電力は4倍以上ということになるでしょう。そもそも換気による熱損失はお金にすると年間数千円程度ですから、換気扇の電気代でチャラになるくらいでしょう。そこにフィルターなどの消耗品・メンテナンスを考えると、決して魅力的ではありません。
何よりも、必要な換気がきちっとできていないかもしれないリスクを考えると、選ぶ理由はなくなります。
ではなぜ、熱交換を進めるのでしょうか。第1種換気には熱交換をしないといけない理由があるのです。
今回はここまで。次回は結露のお話も交えてさらに掘り下げます!