「そよかぜの家」のはじまり
きっかけは、お客様のシックハウス症状でした。
私が健康住宅に取り組み始めたのは1998年です。その前の年に引渡しをしたお客様が、いわゆるシックハウスの症状になられたことがきっかけでした。
当時手がけていた住宅の多くは、地域に伝統的に定着している間取りで、敷地はじゅうぶんに広く、南北に大きな開口をもうけ、風通しに配慮したものでした。使用する建材類も、信頼を置けるメーカーの最新商品ばかりでした。にもかかわらず…。
お客様にヒアリングをしたところ、住み方にも原因があったようです。共働きの家庭で、昼間は窓を閉め切り、帰宅後も窓を開けるよりもエアコンを入れるという生活が続いていたようで、その結果換気不足になったものと考えられます。
いくら風通しの良い間取りであっても、窓を開けてもらわなければ換気できないということを痛感しました。
「どんな住み方をしても、健康を害するような家は作りたくない」と強く感じ、“健康住宅”を意識し始めました。
省エネ偏重のツケ
1997年に地球温暖化防止京都会議が開催されたのをきっかけに、日本中で省エネに対する意識が急速に高まり、住宅の省エネ化に目が向けられました。
国を挙げて住宅の高気密高断熱化が叫ばれ、ハウスメーカーはもとより、一般の工務店も取り組みを始めました。
ところが自国の気象条件に合った断熱のノウハウがまだまだ未熟だったため、断熱による温度差で生じる結露(特に夏の結露)や、気密化に伴う換気の必要性などについて、無頓着とさえ思われるような工法が推奨されていました。
その結果、シックハウス症候群が急増したのです。
確実に計画換気ができる高気密高断熱住宅
私は当時、健康住宅への意識が強かったので、様々なリスクのある高気密高断熱化については踏み込めずにいました。
健康で快適な暮らしをしてもらうために、確実に換気ができる方法を確立することが、何より重要と考えたからです。
その後、モニターの協力も得ながら試行錯誤を繰り返し、2000年に「健康住宅そよかぜの家」として、外張断熱工法と第3種換気の組み合せによる高気密高断熱住宅を発表しました。
ここで特筆したいのは、住宅の気密性が高くなったから機械換気が必要になったのではなく、確実に計画換気をする為に、気密性を高めたということです。
この計画換気が、「そよかぜの家」のはじまりの第一歩でした。